2009.10.04

潜水服は蝶の夢を見る

元気にバリバリ働いていたELLEの編集長が、
突然倒れ、全身の麻痺により身体の自由を失った。
動くのは左目だけという状況で、生きる。
 
脳は正常で、考えることもできるし、感情もある。
だから、画面が左目だけからの見え方になると、
それ以外のものが一切動かないことをもどかしく感じる。

死にたいと思ってしまうのも当然だと思う。
しかし、自力で死ぬこともできない。

言語療法士が唯一動く左目の瞬きだけで、言葉を伝える方法を考えた。
単語のつづりの、1文字を伝えるのに、何文字も読み上げてもらい、
該当するところで瞬きをする、それだけ。

気の遠くなる方法だが、彼女が根気強く傍にいて言葉を聞き、
本を書くときの助手も、もっともっと根気強く、
一冊の本になるまで1文字ずつ言葉を書き取った。

その作業が彼のために行われたことが素晴らしい。
もちろん、その方法に従った彼も、素晴らしい。
よく死にたい気持ちから、本を書こうと思ったものだ。

有り得ない!と思うけど、実際にそうなったら有り得てしまう。
そんな極限の状況で、支えてくれる人が自分にいるのか。
そんなことをうっすら考えてしまうのであった。

彼に家族がいなかったら、心の支えの大部分がなかったか、
もしくは別の人がいたのか・・・。
 


2009.10.04, 08:48 / ☆☆☆☆
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