単独行
単独行
著:加藤文太郎
孤高の人を読んで、加藤文太郎について本当のところを知りたくなって、こちらを読んだ。
半分くらいが本人の山行記録で、何時にどこ、というポイントと短い感想が書かれたもの。
これらは記録違いでもない限りは、おそらく真実だろう。
小説から几帳面な性格かと思っていたが、マッチを忘れたとか時々出てくるので、抜けてる面もあったのかな。
山小屋で一悶着あった方々が亡くなったときなどは、その心情が綴られている。
そういう目立ったエピソードは、小説でも登場する。
ただ、それ以外のところは、花子夫人や周辺の方々への取材によるものと、作者が創造したものとあるだろう。
そちらのほうが割合としては大きいので、結果として真実か創作かはわからない。
それはそれでよしとしなければならない。
人が嫌いというのが漫画で描かれた性格で、
人が好きなんだけど人付き合いが苦手というのが小説で描かれた性格。
この本に書かれていたのは、それなりに人付き合いもあるが、勝手がわからないところで失敗する普通の人。
亡くなった後で登山仲間がたくさん温かくしてくれたと書かれていたし、本人が気にしすぎなだけなのかもしれない。
漫画ではロッククライマー、小説では速歩と道具の準備の達人だったが、
この本では、岩登りとスキーは苦手という意識があって練習してる。
だいぶ謙虚な人なんだろうなと思う。
小説と同じだったのは、もらった休暇日数を気にするサラリーマン的なところ。
それが共感を呼ぶんだろうなとも思う。
結局、まだ気になって、別の人が加藤文太郎を題材に書いた小説『単独行者』を読もうとしている。
どうやらそちらも、違う性格として描かれているらしい。